いぬのプーにおそわったこと~番外編

Can ! Do ! Pet Dog School

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  4. スキーでの思い出
 
 
 
 
 
 
 

 
 プーとは毎年のように、スキーにも出向きました。
 初めて行ったのは、これもまたモモちゃん家族とでした。
 場所は、会社員時代からよくいっていた長野の蓼科(たてしな)地区のスキー場。
 車山高原スキー場、白樺高原国際スキー場、姫木平スキー場、この3カ所周辺で、犬連れで泊まれる、しかもゲレンデまで歩いていける宿を探しました。
 当時はまだまだペットと泊まれる宿は少なく、数少ない候補から選んだのは、姫木平(ひめきだいら)スキー場そばのペンションでした。
 幹線道路は除雪されており、道路の両脇に雪が少し残る程度で宿の近くまでは、チェーン装着が不要でした。もっとも、私の車はパートタイム4WDという駆動システムで、さらにマッド&スノウという多少の雪道なら大丈夫というタイヤを装着していましたので、チェーンの用意はしていませんでした。
 宿は脇道の坂を200メートルほど上がった左側にありました。
 北側の斜面、しかも車がそれほど行き来しないからでしょう、坂には凍った雪が所々に残っていました。私の車は4WDにすることもなくどうにか坂を登り切ることが出来ました。問題はYの車でした。ノーマルタイヤ、しかも後輪駆動のYの車が、坂の昇りはじめのところで立ち往生してしまったのです。Yは一旦、脇道から元の道に車を戻し、チェーンを装着することにしました。
 宿に到着したのは、そろそろ太陽が沈みかけるか、という時間でした。
 荷物を部屋に運び、夕食まで少し時間があったので、私たちは軽く宿の周辺を散策することとしました。プーとモモちゃんには、伸縮リードをつけました。2匹は、匂い嗅ぎを心ゆくまで楽しんでいました。子供たちもはしゃいでいました。犬たちとからみつくように、走り回っていました。
 宿に戻ると、じきに夕食の時間になりました。
 ペット連れで泊まれる宿の多くがそうですが、飼い主たちの食事の時間帯は、ダイニングへは犬連れで入れない、犬はお部屋でお留守番、というのが一般的です。そこのペンションも同様でした。
 プーはもちろんモモちゃんも、
 「ハウス」
 と声をかければ、クレートの中に入ります。飼い主が部屋から出て行く姿を見せないように、飼い主が見える側には掛け布をかけ、ダイニングへと降りていきました。
「キャンキャンキャン、キャンキャンキャン」
 食事を楽しんでいると、犬の鳴き声が聞こえてきました。プーもモモちゃんも、クレートトレーニングができていますので、騒ぐことはありません。
 鳴き声の高さからいって、サイズの小さな犬だということが想像できました。           
 食事を済ませ、部屋に戻る時に、吠えているのは私の隣の部屋の犬だということがわかりました。
 「かわいそうに」
 「飼い主が戻ってくるまで泣き続けるんだろうな」
 部屋に戻り、クレートの中を覗くと、プーはいつものように丸くなっていて、
 「何かご用?」
 とでもいいたげに、首だけをあげ私の方を見ました。
 「ゲレンデに行ってみるか」
 私たちは、食後の散歩を楽しむことにしました。
 細い道を5分ぐらい歩き、林を抜けるとライトに照らされた白銀の世界がぱっと開けました。人っ子一人いませんでした。私たち以外誰もいないゲレンデを、プーとモモちゃんはかけずり回っています。子供たちは雪合戦をはじめました。
 夜のゲレンデはさすがに冷え込みます。私たちはカラダが冷え切ってしまう前に、ペンションへと戻りました。
 飼い主が戻ってきているのでしょう、隣の部屋の犬の吠えはやんでいました。
私たちはその後、お風呂に入ったり、トランプを楽しんだりして過ごしました。
 隣の犬は、飼い主がトイレに行ったり、何かしらの用事で部屋を出て行ったりするたびに、吠えていました。
 「クレートトレーニングができていない犬は可愛そうだな」
 このペンションでの出来事は、クレートトレーニングの重要性をあらためて感じさせるものでした。
 「結構積もったな」
 翌日起きると、雪が積もっていました。
 スキーに来ていて雪が降ることは、うれしくもあるわけですが、いざ帰ろうとしたときに問題は起こりました。
 私の車が4WDへと切り替わらず、駐車場から出ることすらできなくなってしまっていたのです。坂道にも昨夜の雪が残っています。後輪の下の雪をかきだし、Yに車を押してもらえば、駐車場から出られないことはないでしょう。でも、坂道の不安が残ります。
 結局昨日チェーンを装着したYの車に乗せてもらい、ガソリンスタンドでチェーンを購入することとなりました。
 この一件以来、私はスキーに出向くときは、スタッドレスタイヤを装着し、加えてチェーンの携行も忘れないようにしています。



※著者コメント

 
プーは毛足の長い犬でしたので、雪の中に入ると毛に雪玉をよく作っていました。雨は嫌いでしたが、雪はそれほど嫌いではなかったように思います。残念ながら書籍のページ数の関係でこのスキーのお話は割愛することとなりましたが、子供達も小さかったので、スキーの思い出は今や大切な宝物のひとつです。